10年勤めた会社を辞め、転職活動を経て、ようやく見つけた新しい仕事。
それが「病院の深夜当直業務」だった。
倉庫バイトのように体を酷使する仕事ではないが、今度は「気を抜けない精神的な緊張」が伴う。
それでも、夜の病院という非日常の世界に自分の居場所を得られたことは、妙な安堵をもたらしてくれた。
深夜当直の研修期間 ― メモとイメトレの日々
研修は想像以上に濃密だった。
覚えることは山ほどある。
電話の取り方、救急患者の受付対応、各部署への連絡フロー、そして会計処理。
少しでも取りこぼさないようにと、メモ帳が真っ黒になるまで書き込み続けた。
寝る前や通勤の行き帰りの電車の中でも、頭の中で何度もシミュレーション。
疑問点が出ればすぐメモに追記し、次の出勤時に確認する――まるで受験勉強のような数日間だった。
その努力の甲斐あって、**11月12日。ついに初めての「一人勤務」**を無事に終えることができた。
初日は緊張で手が震えたが、大きなミスもなく乗り切れたのは、自分でも少し誇らしかった。
人に恵まれた現場
この仕事を始めて痛感したのは、「人に恵まれている」ということ。
ベテランの警備員さんが、要所要所でフォローしてくれる。
もうすぐ退職される事務当直の先輩からは、手書きの細かな作業メモを譲り受けた。
「困ったらこれを見れば大体の流れは思い出せるから」と言われた時、
なんだか胸が熱くなった。
社会人生活を20年以上やってきたが、こうした“静かに支えてくれる人”の存在は何よりありがたい。
夜勤という孤独な時間を過ごす仕事だからこそ、人の温かさが身に染みる。
今夜の業務 ― 警備と事務の二刀流
今夜は21時から翌朝6時まで。
いつもより短めのシフトだが、内容は濃い。
この日は「警備員と事務員がお互いの仮眠中に仕事を代行する」フォロー業務。
つまり、どちらかが休んでいる間、もう一方の持ち場を一時的に引き受けるというものだ。
警備員が仮眠を取る時間は、防災室の窓口に座って院内外の出入りを管理する。
深夜に訪れる患者さんや家族、業者の対応も含まれる。
一見静かだが、万一トラブルが起きたら一人で判断しなければならない。
逆に、事務員が仮眠に入る時間帯は、自分が夜間受付・会計・救急受け入れを担当する。
これまで研修で叩き込まれた知識を総動員して、冷静に、正確にこなす。
幸い今夜は穏やかで、患者の来院も少なく、院内は静まり返っている。
緊張が少し緩むと、代わりに眠気と倦怠感がじわじわと押し寄せてくる。
静かな夜、ふと立ち止まって考える
夜勤というのは、昼間の仕事と違って「時間が止まっている」ように感じる瞬間がある。
人の動きが少なく、音もない。
時計の針と自分の心音だけが聞こえる。
そんな時、ふと考える。
「この先、どう生きていこうか」と。
会社員時代には、こんな風に“自分の人生設計”を正面から考える時間などなかった。
でも今は違う。
夜の病院で、ただひとり座っていると、心の奥の声が聞こえてくる。
なれてしまえば惰性でこなせる仕事かもしれない。
だからこそ、惰性にならないように、自分の次の目標を明確に描く必要がある。
生活を立て直すだけでなく、再び「自分の事業」としてマネタイズを回す段階に戻りたい。
夜明け前の小さなご褒美
今夜の業務は朝6時に終わる予定だ。
長い社会人生活の中で、夜勤明けの空というのは不思議な感覚だ。
まだ世界が眠っているのに、自分だけが朝を迎えている。
そんな“ずれた時間”の中に、少しの優越感と寂しさがある。
仕事を終えたら、山岡家のラーメンでも食べて帰ろうかと思っている。
こってりしたスープが、徹夜明けの体に妙に染みる。
そして地元へ帰る途中、車を少し走らせて海を眺めて帰ろう。
潮の香りを吸い込みながら、「ここからどう生き直すか」をもう一度考えたい。
終わりに
深夜の病院で働くというのは、孤独でありながら、人と人との信頼で成り立っている仕事だ。
今日も誰かの命を支える現場で、自分の生活を支える。
47歳、再出発の夜。
焦らず、腐らず、静かに前へ進んでいこうと思う。

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